お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
「こうなったら」
私は財布を出すと大量にコインに換金してきた。
当たるまでやってやる!
会社でも馬鹿にされ、智哉にも馬鹿にされては家に帰っても眠れない。
それから、連続でバッドを振り続けた。
目が速さに慣れてきて、タイミングのコツは掴めるようになり、たまにボールに掠る。
だけど、当たる面積が小さくて前に飛ばず、斜め後ろへと逸れていくだけ。
「腰が引けてんだよ。腕だけで打つんじゃなくて腰から入れていくの」
ボックスの外から監督のごとく私を眺めていた智哉が最後の一球が終わったのを見て中に入ってくる。
がむしゃらにバッドを振り続けていた万年運動不足の私はバッドに寄りかかって肩で息をしながら、智哉を見上げた。
「腰?」
「そう、腕だけで打つと身体痛めるし、変に力入ってしんどいだろ」
言われてみれば、私はただ腕を振ってボールに当てようとしていた。
ゴルフでも腰を使って打つって言ってたし。
優菜の付き合いで一度だけゴルフのレッスンに行った時のことを思い出した。
その時は優菜がセレブを狙ってゴルフ合コンに行くために練習しようとなったけれど、あの小さなゴルフボールに当てることが難しく、二人とも一度で挫折した。
「こう?」
その時のことを思い出して、自分なりに腰を使ってバッドの素振りをしてみる。
一度してみて智哉を窺うと緩く首を振った。
「違う、こう」
そう言いながら背後から私のバッドを持つ手に自分の手を重ねて握ると、ゆっくりと腕を動かした。
背中にぴったりと智哉の胸板がくっついて、その固さに心臓が一気に鼓動を加速させた。