お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
エレベーターの中
「あー、どうしよ」
私は携帯を睨みつけて何度目かわからないセリフを吐く。
「どうしたんですか?」
隣のデスクの優菜が昼食後のコーヒーを飲みながらこちらを覗き込んでくる。
私はどんよりとした表情で彼女に視線を向けた。
「それがね、今度奢ることになっちゃって」
「誰をって……愚問でしたね」
優菜の言葉に私はため息で肯定した。
一週間前、仕事のことで落ち込んだ私を連れだしてくれた。
やはり、全てがすっきり納得できたわけではなく、多少のしこりはある。
だけど、自分のこれからの道筋を考えるくらいには冷静になれた。
仕事の割り振りはどうしようもない。次に来る仕事を全うするだけ。
それでも、理不尽なことが再び起きた時には進退を考える。
それが今考えられるシンプルで最善の方法。
智哉がいなければ心に溜まったありさへの憎悪が燻り続けたまま過ごして、いつかまた制御できないほどの大爆発を起こしていただろう。
そのお礼も込めて、食事に誘ってみたのだ。
私から誘うのは初めてで、メッセージを送るのに何度躊躇し、削除と作成を繰り返しただろう。
それから添削に添削を重ねて送ったメッセージになかなか返事がこなくてやきもき。
いつも智哉は比較的レスが早い。
即レスも珍しくないからちゃんと仕事してるのかと思うほどなのに、今回に限って半日以上待った。