お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
「でも、いきなり結婚ってちょっと怖いですよね。変な性癖とかあっても嫌ですし。お見合いってどのタイミングでエッチするんだろ。まさか、初夜までないのかなー」
「さぁ……」
「でも、まぁ先輩は断るなら問題ないか。あー、せっかく先輩に言い寄る男が出てきたのに」
「言い寄るって言い方やめなさい。向こうも体裁のためで嫌々受けたんだろうし」
「だってーせっかくラブな話が出てくるかと思ったのに。ほら、先輩前に酔っぱらって言ってたじゃないですか。『過去に告白されたことなんて地元の不良だけだ。私はモテないんだー』って」
「ぶっ」
食後の番茶を吹き出しそうになった。
慌てておしぼりで口元を拭う。
「わ、私、そんなこと言った?」
「言いました。高校の時のコンビニのバイト先で不良にいきなり告られたって。きっと先輩の姉御肌っていうのかな。それがヤンキーにはわかったんですよー。私もわかりますもん」
優菜はボブに切り揃えたミルクチョコレート色の髪を揺らしてクスリと笑う。
彼女はやはり過去に夜な夜なバイクを走らせていたらしい。
いや、今はそれは置いておいて……。
「あれはたまたまでしょ。罰ゲームじゃないかな。だってろくにしゃべったことないもん」
「でも、『あの時が私のモテ期だっていうのかー!』って管巻いてましたよ」
「……忘れて」
酒に弱いのにあの時は酒豪の優菜に釣られて飲み過ぎた。
最後のほうは記憶がなかったけど、朝ちゃんと自分の部屋で寝ていたのだから帰巣本能とはすごいものだ。
ただ、後輩にそんなみっともない姿を晒していたとは居たたまれない。