お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
心臓に悪いからやめてほしいわ。
ドキドキと早くなった胸を押さえると
「藤野さん、この前石原さん殴ったんだって?」
隣から名前が聞こえてきて現実に戻る。
「いや、未遂だろ?」
間違いであってほしかったのに、次に聞こえてきた声で絶望が押し寄せてきた。
達彦だ。
あろうことか同じ会社のしかも元カレの隣の席に案内されたらしい。
どんな確率なのかと神様を呪いたくなる私を置いてどんどん会話は進んでいく、
「俺は往復ビンタしたって聞いたけど。どっちにしろ、こえー。修羅場だろ」
「まだ藤野はお前のこと好きなのかな」
「どうだか。あいつもう婚約者いるし」
「当てつけじゃねぇの?お前だけ幸せになるなんて許せねぇんだろ」
智哉を見ると、頬杖をついてメニューから目を離していない。
気づいていないのかな。
私のことだとバレていたら気まずいことこの上ない。
どうか気づいていませんようにと願った時、
「まぁどっちにしろ、あいつといても淡白っていうか、つまらないし、別れて正解だった」
達彦の放ったこの言葉に息が詰まった。
死んだ彼への想いにとどめとばかりに刃物を突きたてられたかのような感覚。
もう息絶えた心をまだあなたは私を傷つけようとするの?