お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~


かつて愛した人からの仕打ちに涙が沸き上がりそうになってぐっと奥歯を噛み締めた。



その時、智哉が不意に立ち上がると、隣とを仕切っているロールカーテンの裾をバッと上に持ち上げた。



急に開けた視界の先に達彦たち四人がびっくりしている顔が並んでいた。



「こんばんはー」



智哉の朗らかな声が凍り付いた場に似合わず通る。




「声が聞こえてきたからもしかしたらそうかと思って。前にお会いしましたよね?」

「あ、ああ、はい」





問いかけられた達彦は戸惑いながらも頷いた。



智哉は麗しい笑顔のままぐるっと四人を一度見回す。





「なんか、うちの桜子が皆さんにご迷惑でもおかけしました?」


「い、いいえ」


「そうですか、名前だけちらっと聞こえてきたものですから、何かあったのかと」





そうは言うものの、信じる者はこの場にはいないだろう。



名前が聞こえてきただけで、普通はこんなふうに突然乱入しない。




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