お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
気づかれた!
私が彼を好きになったこと。
あれだけ落ちないと言っておきながら、すっかり智哉に魅入られていること。
彼は私に女としての感情はないのに。
チクリと心が痛む。
こちらには好意があっても相手にはない。
それがどれほど空しいことかを私は達彦の時に思い知っている。
どうしても、好きなほうが妥協をして、相手に合わせて。最後は重くなって捨てられる。
次会った時、どうしよう。
不自然な別れ方をしてしまった。
次、何事もなかったようにすれば智哉も合わせてくれるだろうか。
あと、結婚の話も……。
自分の中でまだ答えを言えずにいる。それもそろそろ決断しないといけない。
呼んでいたエレベーターが来て、ドアが開いた。
重い気持ちで乗り込んで三階のボタンを押す。
その時、閉まっていく扉が視界の端で止まった。
顔を上げると息を切らした智哉がドアを押さえているところだった。
智哉と目が合う。
あっと声を上げる前に視界が塞がった。
「あんな顔しといて逃げるなんて反則」
抱き締められながら聞こえてくる智哉の声。
目の前でエレベーターのドアがゆっくりと閉まっていく。
身体に回された男の腕に心臓が早鐘のように打っていた。