お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
好きって言って



「疲れた」


仕事が終わって、帰り道に思わず独り言が漏れる。


十時。


コンビニで適当にパンと惣菜を掴んで籠に入れる。


明日の朝ごはんだ。


明日は土曜日。

長い一週間の勤務が終わって、ゆっくり朝寝坊しても許される日。



今、冷蔵庫やパントリーはほぼ空だ。


この三日ほど家を空けていたからだ。



食料を全て使い切ったため、明日のごはんもあらかじめ買って帰らないといけない。


朝出るよりは帰り道買ってかえったほうが手間がない。



安売りされた食料を手に提げつつ、角で立ち止まる。



そこからゆっくり顔を出した。


マンション前に車は止まっていない。



その先や周辺も念のため確認するが、車もなければ人影もない。




私はほっと息を吐いてマンションに歩いていく。



エレベーターを使って三階で降りて、廊下を曲がって自分の部屋の前に出たところで足が止まった。




部屋の前で壁を背に座り込む男の姿。




智哉だ。




外から見たら廊下に誰もいなかったから待ち伏せはないと思っていたら、しゃがみこんでいて見えなかっただけだった。



安心しきっていた私は完全に気が緩んでいて、身を隠すのも逃げるのも一歩遅かった。



智哉の鋭い双眼で捉えられると金縛りにあったみたいに足が動かなかった。




「……な、何、してるの?」


「お前が電話もメールも拒否するから待ってた」





智哉の疲れた様子でそう言うと立ち上がって私のほうに歩み寄ってくる。


その時になって逃げようと身体が動きかけたけど、もう遅くて目の前に立つ智哉と対峙するしかなかった。




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