お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
「そんな話、親が勝手に持ってきただけで断る。俺が好きなのは桜子だ」
智哉の言葉にこんな時でも胸が高鳴った。
でも、彼が将来的に社長になるならどちらを嫁に取ったほうが有益なのか。誰でもわかることだ。
「今、あなたが感情で私がいいと選んでも、将来後悔する時が来るかもしれない」
彼は有能で、リーダーとして周囲の人間を引っ張っていける人だ。
きっといい社長になって、自慢の商品を多くの人に飲んでもらえるよう大きな会社できる。
だけど、その隣に私はふさわしいのか。
何か窮地に立たされた時に彼を助けられる力が私にはない。
後ろ盾として彼を守ってやれるものもない。
「その時に重荷になるくらいなら、今離れたいの」
視界がどんどん曇っていく。それはやがて私の両目の端から溢れて流れ落ちた。
隠したくても智哉に両手を封じられているから、無駄だとわかりつつ顔だけを背ける。
「もっと、好きになってからじゃ……捨てられた時に耐えられない」
喉の奥から競りあがってくるものに声を詰まらせながら言った。
本当に彼の将来のためを思うなら離れるべきだ。
これ以上一緒にいたら、きっと離れられない。
いや、彼の気持ちが冷めてしまった時に手を離されるくらいならこちらから離してしまいたい。
彼のためだと言いながら、全て、自信がない己のための言い訳だった。