お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~



そういえば、餡子が無性に食べたくなる時があるって前に言ってたな。


一度欲しくなると夜中でもコンビニにアンパン買いに行くって。スタイルがいい智哉は甘いものを食べなさそうなのに意外だ。



そういえば、このバターアンパンは昔バイトしていたコンビニにも置いてあった。


今朝、夢に出た不良少年もこのバターアンパンが好物だった。

あの人も見た目に似合わず甘党だったみたい。

あの仏頂面で少し恥ずかしそうにアンパンをレジに持ってくる顔を思い出して思わずクスリと笑みが零れた。




「どうした?」

「いや、今日の夢でね。いつもこのアンパン買っていく人が出てきたの。私、その人に告白されたんだよね。いきなりレジでアンパン買った後に。私、告白されたの人生初めてだったからびっくりして『ごめんなさい!』って反射的に言って、店の奥に逃げちゃったんだ。その後バイトやめたからもう会えなかったんだけど、もう少し気の利いた言葉あったよね」





今考えたら失礼な断り方だ。


もっと、丁寧に言うべきだった。


怖そうだけどチャラかったわけではない。



硬派な雰囲気さえ漂う彼はとても勇気を振り絞って告白したはずなのに、逃げるなんてとても傷つけたに違いない。



「どうしてるんだろうなぁ」

「さ、さぁ、元気でやってんじゃねぇかな」



インスタントのコーヒーを淹れようとポットでお湯を沸かしながら呟くと、智哉が明後日の方角を見ながらアンパンの包装を開いた。



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