お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~


最初から私があのコンビニ店員だって知っていたのね。


途中で気づいたわけでもなく、最初から智哉は私に縁談を持ってきたのだ。


確かに姉が未婚なのに妹の私に話が来るのも不自然だった。



目の前に置かれたカタログに目を落とす。

表紙の撮影したのは一月くらいで、まだ春なんて感じられない季節だった。


近所の神社で私が桜の刺繍が入った紅色の着物で撮った写真だ。



母はこのカタログを経費の無駄だと何度かやめさせようとしたが、父は「これを見て桜子たちがいい人の目に止まるかもしれないだろ?」と冗談で誤魔化していた。まさに本当にそうなるとは本人も思ってはいないだろう。




「あの、私と結婚しないと後継がせないっていうのは?」




今聞いた全ての話を繋げるとそこだけがどうしても辻褄が合わない。


最後の疑問を問うと清子さんはきょとんとして首を横に振った。




「そんなことないわよ。この子の兄は酪農家の娘さんに惚れて、後継ぎがいないからそこを継ぐって北海道に行ってしまったし。順当にいけばこの子が継ぐことになるけど、まぁそれもやる気がなければ、血縁者に限らず有能な人物に継いでもらってもいいと思ってるの。無能が継ぐよりいいでしょう」




さらっと毒を吐くところも見た目がまろやかな分際立つ。


でも、腹の内を見せない人よりよほど信頼できる。




それに比べて。



私は隣の智哉をギロリと睨む。


さすがにその眼差しからは逃げられなかったのか智哉がしどろもどろで口を開いた。



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