お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
「だ、だって、最初に断る空気バリバリ出されたらさ、どうにかして逃げられないようにしねぇとと思って。家のこととか近所の体裁とか何でもいいから使って……すぐには断れないように仕向けました、すみません」
最後のほうは私と清子さんから注がれる冷たい視線に負けて、頭を下げた。
しゅんと項垂れて背を丸くする姿は、いつもの凛々しい姿やましてや不良少年だった頃とはかけ離れているけど、幼い子供みたいで可愛い。
こういう違った一面を見てまた好きになっていく。
思わず笑みが漏れると清子さんが座布団から降りて畳に指をついた。
「桜子ちゃん、こんな浅はかで粗忽者だけど、智哉のことお願いします」
そう言って深く頭を下げられて焦ったけど、私も同じように座布団から降りて正座をし直すと清子さんに頭を下げた。
「はい、私でよければ、智哉さんの支えになれるよう頑張ります」
確固たる意志を込めてそう言うと、顔を上げた清子さんがとても嬉しそうに微笑んだ。母親代わりと言っていたけど、その顔はもう母親そのものだった。その愛の深さにじんと心が痺れた。
「頑張らなくても、もう十分だよ」
感極まった私に智哉が肩に手を置いて言うものだから、つい涙が零れてしまって。
慌てて指で拭く私を智哉がそっと抱きしめてくるから、今度は照れでどうにかなってしまいそうだった。
「あらあら、お熱いこと」
清子さんは私たちを見て、少女みたいにコロコロと笑った。