恋は盲目、愛は永遠
「唯子、そんなに心配するな。私の家族は私同様、いたって普通の人々だ」
「坊ちゃんそれ説得力ゼロ。ってかマイナスっす」
「どういう意味だ、翼」
「坊ちゃんみたいなのが何人もいるんすよ?それを唯子ちゃんひとりでバーサスっすか?」
「いや。今日は親族も来ているぞ」
「ええっ?!鈴太郎さん、それ聞いてませんよっ!」
「今話したじゃないか。心配するな。私が片時もおまえのそばを離れずについている」

「それができるといいんですけどね」

そう言ったのは、確かに運転手の倉田さんだった。
あの無口な倉田さんが。
そしていつも的確なタイミングで的確な言葉を言う、あの倉田さんが。

それだけに車内はシーンと静まり返り、その沈黙が、倉田さんの発言の意味を、よりリアルにしていた。
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