恋は盲目、愛は永遠
「え?」
「めがねがないと見えないのだろう?」
「あ・・・はい・・・?」

でもなんでこの人の顔はよく見えるのかな。

思ったとおり、この人は美麗な顔立ちだ。
男の人に「美麗」はないと思うけど、スッと通った鼻筋や、薄い唇、切れ長の目は、男の人なんだけど、キレイだなと思う。
瞳は夜空のように黒く、星のようなきらめきがある。

「この距離でようやく私の顔が見えるのか」と彼に言われた私は、両目を見開いた。

ち、近い・・・この人絶対近くにいる!
だからこの人の顔がよく見えるわけで・・・。
そしてさっきこの人が言葉を発したときの息が、私の顔にかかったわけで。

たぶん私たちの顔の間は、数センチしか開いてないはず。
ここに向坂(さきさか)さんがいてくれたら、パソコン画面から私を引き離してくれるんだけど・・・。

でも向坂さんはいないし、彼はパソコン画面じゃない。
おまけに私はシートに縛られてるから、私から離れることはできない。
そのくせ黒く輝く彼の瞳に吸い込まれそうな私は、彼から視線をそらすことができなかった。
< 21 / 298 >

この作品をシェア

pagetop