恋は盲目、愛は永遠
鈴太郎さんが北欧へ出張中の5日間、運転手の倉田さんが常に屋敷に常駐し、私が出かける際は喜んで足になると言ってくれた。
でも視力がまた落ちたことで、視界がますますぼやけてきた私は、外出する気にならなかった。

ただ、この屋敷の庭や温室に行くのは好きだった。
そこの雰囲気は、何となくハネムーンで行った井沢の別荘周辺の森と似ているから。

倉田さんと倉田さんのお父さんが庭仕事をしているのか、鋏でパチンと枝を切ってる音や、掃く音を聞いたり、風を通して漂ってくる花やハーブの香りを感じると、それだけで心が落ち着いた。

屋敷内は大方勝手がわかってきた。
それでも視力が落ちた私が歩くときは、サキさんやみさえさん、倉田さんがいつも腕に手を添えてくれた。

そしてどうやら鈴太郎さんの出張中は、秘書の福島さんも屋敷に滞在することになったらしく、食事時はとても賑やかだった。
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