恋は盲目、愛は永遠
結局手は、料理が運ばれてくるまで離してもらえなかった。
会計を済ませた鈴太郎さんに「ごちそうさまでした」とお礼を言うと、「当然のことだ。礼を言う必要はないぞ」と鈴太郎さんは言って、私の髪から頬を経由し、顎までを、ひとさし指の背でスッと撫でた。

熱を帯びた鈴太郎さんの視線に耐え切れなくなった私は、うつむき加減になりながら、「トイレに行ってきます」とつぶやいた。

「場所は分かるか?」
「はい」
「私は近くで待っている」
「はい」


鈴太郎さんが言ったとおり、人が多いのは三連休の初日のせいかな。
手を洗いながら、少し火照った頬に濡れた手を当てて鏡を見た。
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