恋は盲目、愛は永遠
鈴太郎さんは、あのときと同じ場所にいた。
そこに座ってずっと私を待っててくれていた。
相変わらず人が多い中、ふと視線を感じたのか、鈴太郎さんが立ち上がった。

私は人ごみを掻き分けるように、鈴太郎さんの気配のところへ歩いていった。
鈴太郎さんの目の前まで来たとき、疲れたせいか、少し息切れしていた。
そんな私を、鈴太郎さんはそっと抱きしめた。

「長かったな。いや短かったというべきか」

その口調からして、私が逃亡劇を図ったことはお見通しのようだ。

「鈴太郎さん、あの・・・」
「今は何も言わなくていい。私の鼓動が聞こえるか?」と鈴太郎さんに聞かれた私は、それで鈴太郎さんは自分の左胸に私の耳を押しつけるように抱きしめたのかと思った。

ドキドキ、ドキドキ・・・。
私は両目をつぶって、その鼓動に聞き入った。

< 96 / 298 >

この作品をシェア

pagetop