一途な社長の溺愛シンデレラ

 夜の十一時をまわると注文した料理はだいたい空になり、西村さんも絵里奈もすっかりご機嫌になっていた。

「そろそろ出るか」

 いつのまにか会計を済ませていたらしい社長がタイミングを見計らうように言って、西村さんと絵里奈が敬礼しながら立ち上がる。

「社長、最高っす!」

「ごちそうさまでした社長!」

 そんなふたりに苦笑を漏らしてから、彼は柔らかな目を私に向けた。

「沙良も、もういいか?」

「……うん。ごちそうさまです」

 答えた途端、ぽんと頭に手を置かれた。

「おまえに敬語を使われると、なんだか変な感じだな」

 くしゃっと表情を崩しながら言う社長から目を逸らした。

 お酒で酔うことなんてほとんどないのに、頬が熱くなっているような気がした。



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