一途な社長の溺愛シンデレラ
「いや、おまえって本当にザルだよな」
「猿?」
「いや、ザル。調理器具のほう」
「私がザル……?」
網目の空いた半球型の器具を思い浮かべながらクエスションマークでいっぱいになっている私を見て、社長は楽しそうに笑う。
「酒をいくらでも通すってことだよ。おまえは酒に強いよなって言ってんの」
ほんの少し考えて、私は答える。
「お酒の味はよくわからないけど、お酒の席は好き」
凛としていた周囲の人たちの顔が、結び目が解けるように少しずつ緩んでいくのを見ているのは楽しい。
人のむき出しの感情に触れているようで、どういうわけか少しだけほっとする。
そう言うと、社長は「そうか」と言って、優しく私の頭を撫でた。