一途な社長の溺愛シンデレラ
十分もしないうちに、電車は社長が降りる小ヶ谷駅に到着した。
「それじゃあな。夜更かしするなよ」
笑みを残してドアの向こうに消えていく背中をしばらく見送り、発車ベルが鳴り終わったと同時にドアが閉まる直前でホームに降り立った。
数メートル先で階段をのぼりはじめた社長は、スーツ姿のサラリーマンと交ざっても頭が飛び出しているから見失うことはない。
適度な距離を保ちながら、私は改札を抜ける乗客にまぎれてICカードをタッチした。
いつも通り、社長は暗闇に沈んだ緑の銀杏並木を歩いていく。彼の歩幅に合わせて必然的に小走りになりながら後をつけた。
しばらく大通りに沿って進んでから、大きな背中は右に折れる。