一途な社長の溺愛シンデレラ

 私や絵里奈たちには決して見せない、すべての感情を排除した顔。

 はじめてこの場所で見たときは、背筋がぞくりとした。

“感情が見えない“というのは、周囲の人間からしたらゼロではなくマイナスなのだと、そのときはじめて知った。

 私は感情が表に出にくいからと言い訳をして、周りの人達をずっとマイナスの気持ちにさせていたのかもしれない。

 そんなふうに思って、少し落ち込んだ。

「私がいつまでもおとなしくしていると思わないで!」

 女の声で現実に引き戻される。見ると、彼女は社長に掴みかかるようにして叫んでいた。

「父に頼めば、あんたのちっぽけな会社なんて、あっというまに潰せるんだから!」

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