一途な社長の溺愛シンデレラ

 次の瞬間、社長は彼女の右手首を掴んだ。

 傍から見ると、見つめ合う男女のラブシーンにも思える。

 でも、社長の目は凍りつくように冷たい。

 青と白の怒りの炎。不用意に触れたら凍てついてしまうようなイメージが、社長の全身を取り巻いている。

「麗子さん。そういうことなら、こちらにも考えがあります」

 静かな口調だった。けれど、身体の芯まで凍えるような冷たさがある。

 彼の迫力に圧倒されたのか、麗子と呼ばれた彼女はスーツの胸ぐらから手を放した。

 解き放たれたように一歩彼女から離れると、社長はすっと背筋を伸ばす。


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