一途な社長の溺愛シンデレラ

「あなたは、誰?」

 顔に戸惑いの色をのせて、彼女は答える。

「あ、あんたこそ誰よ! まさか、遼介の女?」

「私はデザイナー。社長の会社で働いてる」

 私の顔をまじまじと見た後で、彼女は思いがけず笑った。

 皮肉っぽく口角を上げ、背中を反らすようにして私を見下ろす。

「ああ、あなたがデザート・ローズなのね」

 社名を言われて首を傾げる私に、女は鼻先で笑うようにして続ける。

「駿佑(しゅんすけ)が言っていたわ。遼介はずいぶんあなたに入れ込んでるそうじゃない」

 一方的な発言のなかに、聞き覚えのある名前があった。

 駿佑。

 思い出されるのは西村さんの顔だ。

 大衆居酒屋の席で、社長の実家の話をしているときに出てきた名前――結城駿佑。

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