一途な社長の溺愛シンデレラ

「疫病神は、あんたの方よ」

 女が刃のような言葉を吐いた、そのときだった。

「麗子さん。それ以上言ったら許しません」

 低い声にはっとして、私たちは振り返った。

 エントランスドアから出てきた社長が、私をかばうように正面に立つ。広い背中に匿われて、私の視界から彼女が遮られた。

「ここで待っていても、兄貴は来ませんよ。どんなに嫌がらせをされても、俺は絶対に兄貴を呼ばない」

 社長の声はあくまで静かだった。それなのに、スーツの背中は怒りで燃えているように見える。

「そろそろ、うちの弁護士の出番でしょうか?」

 広い背中越しに、後ずさりをする麗子さんの顔が、青ざめていくのがわかった。追い打ちをかけるように、社長は続ける。

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