一途な社長の溺愛シンデレラ
「麗子さんはもともと兄貴の許嫁だったんだ。親同士が勝手に決めたね。でも十年くらい前に、彼女自身が破談にしたんだよ」
エレベーターが口を開くと、目の前に玄関ドアが見えた。
都心の一等地に建つこのマンションは、縦長の外観で戸数が少なく各階に二世帯ずつ入居しているけれど、最上階は社長の部屋しかない。
「それがどういうわけか、最近になってヨリを戻したがってるみたいで。兄貴に相手にされないから、こっちに来ていたらしい」
玄関のドアを開けて私を招き入れながら、社長は少しだけ遠い目をする。
「まあ、彼女も気の毒な人なんだけどな。うちの兄貴はなんというか……変わっているから」