一途な社長の溺愛シンデレラ

「だからって、社長を困らせていい理由にはならない」

 まっすぐ見上げると、彼はふっと微笑をこぼした。

「なにか飲むか?」

 私の頭をひとなでし、リビングルームのドアを開ける。2LDKの部屋はいつ来てもきちんと片付いている。

 私の部屋の二倍くらいのリビングには大きな窓があって、群青に染まった空と明かりを灯すビルの群れを同時に見渡すことができた。

 振り返ると、白地にアラベスク模様が流れる大理石のカウンターキッチンに社長が立っている。

 うちの狭い台所にいるときは違和感しか生まないけれど、大理石のキッチンに立つと様になりすぎて、海外のホームドラマでも見ているような気持ちになった。

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