一途な社長の溺愛シンデレラ

「例のマップ、評判いいぞ」

 事務机に座っていた絵里奈がすかさず食いついた。

「だから言ったじゃないですか! あのマップめちゃくちゃ可愛かったもん。成功するに決まってますよ!」

 マップとは、数日前に納品したばかりの新高町の地域おこしで使われる、恋するブックストリートMAPのことだ。

 御池さんは「ふん」と鼻先で笑うと、私を振り返った。

「本当に、見違えるぐらいイメージが変わったよなお前。すっかり女みたいになっちまって」

「なに言ってんですか御池さん! 沙良ちゃんはもともと美少女でしたから! ね、社長」

 絵里奈の発言につられるように、全員の視線がエグゼクティブデスクに注がれる。

 企業サイトのホームページを制作するためにコーディング作業に集中していた西村さんまで、社長の様子をうかがっていた。

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