一途な社長の溺愛シンデレラ

 せめて、私も亜沙香みたいに相手を幸せにできるような笑い方ができれば。

 少しは人と深い関係を結ぶことに自信がもてたのかもしれない。

「きっと……社長を困らせる」

 私はバラじゃない。

 砂の大地に這いつくばって生きるトカゲだ。

 灼熱の大地で足踏みをすることしかできないトカゲと、広い海を悠々と泳ぐクジラは、決して交わることはない。

 だったら最初から、望むべきではないのだ。

「ごめん。私は、社長には、ふさわしくない――」

「ちがう」

 言葉を遮られたと思ったら、彼は苦しそうな顔で私を見た。

「そうじゃない」

 こみ上げてきたらしいなにかを吐き出すように長い息をつき、社長は目を閉じる。それから、私の方に向き直った。

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