一途な社長の溺愛シンデレラ

「これ……」

 表れた画面に、声が震えた。

 私をためらうように見て彼はタブレットに目を落とす。ほんの短い時間、考えるように目を閉じ、そして、意を決したように言った。

「遼介の遼という漢字は、『はるか』とも読める。@haruka(ハルカ)。これは、俺だよ」

「え……」

 言われた意味をいまいち理解できず、私は画面に目を凝らす。

 ホーム画面に表示されている、見慣れたアルファベットの羅列。それはリンクトでユーザー一人ひとりを識別するために与えられるIDで、間違いなくハルカのものだった。

 十年前にはじめてリンクトを始めたあの日から、私にいろいろなことを教えてくれた師匠。

 私が心を開ける数少ない人間のひとり。

「ハルカが、社長? だって、彼女は女の人だよ」

 反論すると、彼は困ったように笑った。

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