一途な社長の溺愛シンデレラ

 目を伏せて語り続けていた社長が、短く息をつく。

 私を振り返り、弱々しく笑った。

「お前の作品を毎日のように見ているうちに、俺は絵の道をあきらめた。自分でも驚くほど、あっさり辞められたよ」

 たった十二歳の少女の絵は、未成熟で荒々しくて、だけど、今にも弾けそうになっている才能のかたまりだった。自分なんて、足元にも及ばない。

 そう続ける社長を、私は黙って見つめる。

 これまで知ることができなかった社長の気持ちは、暗闇にぼんやり浮かぶ青い光のように思えた。

 優しくて目立たないけれど、触れるととてもあたたかい光。

「それから俺は、お前のために生きようと思った」

「……え?」

「飛躍するかもしれないけど、ただ、そう思ったんだ。この子の作品に一生触れていたいって。きっと理屈じゃない」

「……」
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