一途な社長の溺愛シンデレラ

「悪い。よくよく考えたら、ものすごい執着心で、気持ち悪いな、俺」

 社長は両手で顔を覆うようにしてうなだれた。

 自分の行いを客観的になぞる行為をして、あらためて恥ずかしくなったらしい。

 耳まで赤くなっている姿をじっと見ていると、彼はふいに顔を上げた。

 頬を赤らめたまま、ぶれることのない目で私を見る。

「でも、最初にお前の作品を見つけたときから、俺はお前の虜だった」

 雨だ。

 ぽつりぽつりと雨が降っていく。砂漠に降る、突然の雨。

 よく見ると、それは潮だった。

 上空に浮かぶクジラがもたらす、慈愛の雨。

「沙良……?」

< 280 / 302 >

この作品をシェア

pagetop