一途な社長の溺愛シンデレラ

「クジラが、飛んだ……」

「なんだそれ」

 ははっと笑いながら、社長は甘やかすように私の頭をなでた。



 社長に抱きついたままひとしきり泣いた後、私は彼を見下ろした。

 すっと頬に伸びてきた手が、涙の跡を拭う。

 真っ黒の瞳を見つめながら、私はそっと口にする。

「抱きたい?」

 泣きすぎて声がかすれていた。

 そんな私を黙って見つめながら、社長は私の髪をさらりとすく。

「抱く?」

 ふっと彼の表情が崩れた。

 私を優しく引き寄せ、涙が溜まった目もとにキスをする。

「抱きたい」

 こめかみに唇を付けてから、耳にキスをして、彼は囁くように言った。

「本当はずっと、そうしたかった」






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