一途な社長の溺愛シンデレラ

 それでも私がじっと見ていると、あきらめたようにため息をつく。

「お前が住んでるところは、うちの母親が所有するマンションなんだよ。……ついでにここも」

 絶句している私に、弁解するように言う。

「あ、もちろん家賃は自分でちゃんと払ってるぞ。割引なしの適正価格で」

 このマンションはともかく、私が住んでいるあの部屋が相場よりも安いのは、そういう理由があったからなのかと、四年以上住んでいてはじめて知った。

「社長のお母さんて……」

 私はいつかの西村さんの言葉を思い出す。

 大衆居酒屋で社長の家のことを話していたとき、たしか社長のお母さんについてもさらりと言及していなかっただろうか。

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