一途な社長の溺愛シンデレラ
なじみのない言葉を機械的に繰り返していると、社長は私の頭をわしわしなでた。
「沙良はどこに行きたい?」
「どこって」
「どこでもいいぞ。国内でも海外でも」
優しい目で私を見て、彼はタブレットで人気のハネムーン旅行先を検索し始める。
バリ、ニューカレドニア、イタリア、といった言葉が並ぶのを目にしながら、私は自分が非日常の世界にいるところをイメージしてみる。
行きたいところというとピンと来ないけれど、見たいものならいくらでもあった。
デザインの画集に必ずというほど出てくるスペインの街並みとサグラダファミリア、空に向かって屹立する奇岩群とメテオラ、天空の鏡とよばれる塩の湖……。
けれど、なかでもいちばん目に焼き付けたいと思う場所は。