一途な社長の溺愛シンデレラ

「砂漠」

 社長がタブレットから顔を上げる。

「砂漠が、見たい」

 はっきり口にすると、その場に沈黙が漂った。

 おかしなことを言ったかなと思って社長の手元を見ると、彼は検索画面に『砂漠』と打ち込んでいた。

「砂漠なら、やっぱりサハラ砂漠かな。エジプト……よりもモロッコのほうが行きやすいか」

「……いいの?」

 ためらいながら尋ねると、社長は目を上げて不思議そうな顔をした。

「なにがだ?」

「ハネムーンに砂漠って、普通?」

 私のなかの『普通の女子』の基準は、絵里奈だ。

 もし新婚旅行で砂漠に行くなんていう話を彼女が聞いたら、思い切り眉をひそめる気がした。

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