一途な社長の溺愛シンデレラ
「あとでクリエイティブの矢口さんから正式に依頼があると思うんで、詳しいことはそのときに聞いてください」
それじゃ、とにっこり笑って入口ドアに向かい、取っ手に手をかけたところで振り返る。
「あ、そうそう。デザート・ローズの作品は本当にいつも評判いいんで、今後も頼りにしてます」
片手を上げると、竜崎は笑顔のままドアの向こうに消えていった。
台風が去ったオフィスに、BGMの陽気な音楽が場違いに流れ続ける。
ドアを見つめたまま、西村さんがぽつりと言った。
「いいヤツなのか、イヤなヤツなのか、わかりませんね」
「とりあえず仕事はできる。あの若さで天下の三好エージェンシーの営業部でエース張ってんだから」
書類をめくりながら言う社長の言葉に、絵里奈が難しそうな顔でうなずいた。
「そして、数多の女の子を虜にしてるのは間違いないですね。あのノリと顔面の良さと、そつのなさからして」
それぞれの竜崎評を聞くともなしに聞きながら、私はひたすら画面に向かった。
次々と頭に湧く取りとめのないイメージを隅に追いやりながら、今向き合うべき仕事に集中するので精いっぱいだった。