一途な社長の溺愛シンデレラ
広告業界をけん引する大手広告代理店、三好エージェンシー。竜崎明音は、そこの第三営業部でチームリーダーというポジションにいるらしい。
本来、デザート・ローズが三好エージェンシーの仕事を受注する場合、向こうの窓口になるのは営業の竜崎ではなく、企画制作本部のクリエイティブ・ディレクターである矢口さんだ。
それなのに、竜崎は休憩と称して、用がないはずのデザート・ローズにちょくちょく顔を出す。
「ああ、社長と竜崎は、もともとバイト仲間だったんだよ」
焼酎のグラスを揺らしながら、西村さんはつまらなそうに言う。
「大学時代、ふたりとも三好エージェンシーでバイトしてたんだってさ」
「ええ!?」
絵里奈が声をひっくり返した。そのとなりでグラスに口をつけながら、私はなるほど、と納得する。
社長は今の会社を立ち上げる前、つまりは大学時代、大手広告代理店で働きながら業界のアレコレを学んでいたのだ。