一途な社長の溺愛シンデレラ

 現実ではまず会うことのない人たちが、自分の作品を見ているのだと思うと、改めてインターネットの凄さを感じる。

 そして、『リンクト』はとても便利なツールだ。

 人に向かって面とは言えないことを、自由に垂れ流せる。


《私と彼は、砂漠のトカゲと、大海のクジラ》


 灼熱の大地で足踏みをすることしかできないトカゲと、広い海を悠々と泳ぐクジラは、どこまでいっても絶対に交わらない。

 送信ボタンを押して数分もせずに、ピンとポップアップの通知が開いた。

 私が何かを投稿すると、彼女はいつも即座に反応をくれる。

《どうかした?――from@haruka》

 ……どうもしないよ、ハルカ。

 心の中で答えて、私は音楽を再生しヘッドフォンを装着する。

 そう、どうもしない。

 ただ、そばにいると思っていた人が、ずいぶん遠い人だったということが、わかっただけ。

 
 いつものように座椅子にもたれ、スケッチブックを引き寄せる。

 イメージは相変わらずそこにあるのに、真っ白なページを前にしても、しばらく何も描く気が起らなかった。


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