一途な社長の溺愛シンデレラ
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森林の香りがする柔軟剤と言われても、柔軟剤なんて使ったことがないからわからない。
そもそも、森林の香りって何?
わからないことがあるときは、実際に現場に調査に行ったり調べたりするのが常だけれど、今回は遠くの森に行っている余裕はなく、森林の香りを謳うサンプルと、『森林の音』というヒーリング音を聞きながらイメージを思い浮かべた。
雑多なオフィスには、今日もボリュームをおさえたジャズが流れている。
絵里奈が「カフェにいるみたいでおしゃれだから」と選曲したそれは、悪くはないけど、私には少々物足りない。
頭を揺さぶるロック音楽のほうが、雑念が消えて集中しやすい。
ジーンズのポケットに突っ込んだ音楽プレーヤーをオフにし、耳にあてていたヘッドフォンを首にかけたところで、社長がタブレットから顔を上げた。
「さすがだな」
キャビネットに挟まれた社長デスクは、体の大きい彼には窮屈そうだ。そのかわり、背後の大きな窓が開放感をもたらしてくれている。
親の力に頼らず会社を回している社長は、カリスマ主婦みたいにやりくり上手だ。
無駄な印刷をするな。使わない電気はこまめに消せ。と、無駄を省くことに命を燃やしてるのかと思うくらい口うるさく、慣れるまでは叱られてばかりだった。