一途な社長の溺愛シンデレラ
社長は躊躇するように私に近づくと、ゆっくりファスナーを上げていった。
彼の手が背中をのぼっていくにつれて、ゆったりしていた上半身の布がきゅっと体にフィットしていく。
「新井さんの仕業か……くそ」
頭上で小さくこぼしている社長を振り仰ぐと、彼はあわてたように眼を逸らした。
「どうしたの?」
「……いや」
なんだか急に歯切れが悪くなった社長を不思議に思いながら、私は自らを包むドレスを見下ろした。
一昨年の冬に西村さんの彼女から借りたチャイナドレスは、サイズが少し大きくて借り物感がぬぐえなかったけれど、この衣装は私の体にぴったり合っている。
さらりとした手触りはなめらかで、縫製も細やかだし、全体的に質が高い。
ファッションに疎い私でも、このドレスやさっきの服が安物ではないことだけはわかる。
「この服、なにに使うの?」
「全部、お前のだよ」
「え……」
私と視線を合わせないままベッドに腰掛ける社長を、まじまじと見つめる。
形のいい唇を不自然に歪ませながら、彼は言った。