今宵、エリート将校とかりそめの契りを
わずかな間を置いて、静かに口を開く。
「私を妻だと言ったのは、総士さんの方じゃありませんか」
琴の返事を聞いた総士の肩が、ピクリと微かに震えた。
「昨夜もあなたは、私にそう言ってくれたじゃないですか。なのに……どうして私が言い張るのは許してくれないのですか」
彼の皮肉への仕返しに、琴は詰るような言い方をした。
それに総士はわずかな間無言を貫き、黙ったまま首を捻って、琴の方に顔を向ける。
「琴?」
訝し気に眉を寄せ、目線を向ける総士を見つめ返し、琴はきゅっと唇を噛んだ。
「信じてくださいなどと、懇願はしません。でも……信じてほしい。そう願っては、いけませんか」
琴はどこか悔し気に、それでいて悲し気に表情を歪める。
総士は彼女のそんな表情を、斜めの角度で下から見上げていた。
しかし、フッと目を伏せると、再び琴とは反対側に顔を背けてしまう。
(やっぱり……正一さんのことを説明しなければ、一度根付いた私への不信感を、拭うことはできないのかしら)
琴は顔を俯かせ、膝の上でギュッと手を握りしめた。
顕清の戦友で、佐和子の兄だと、そのままを伝えて済むのであれば、それが一番簡単なことだ。
しかし……。
「私を妻だと言ったのは、総士さんの方じゃありませんか」
琴の返事を聞いた総士の肩が、ピクリと微かに震えた。
「昨夜もあなたは、私にそう言ってくれたじゃないですか。なのに……どうして私が言い張るのは許してくれないのですか」
彼の皮肉への仕返しに、琴は詰るような言い方をした。
それに総士はわずかな間無言を貫き、黙ったまま首を捻って、琴の方に顔を向ける。
「琴?」
訝し気に眉を寄せ、目線を向ける総士を見つめ返し、琴はきゅっと唇を噛んだ。
「信じてくださいなどと、懇願はしません。でも……信じてほしい。そう願っては、いけませんか」
琴はどこか悔し気に、それでいて悲し気に表情を歪める。
総士は彼女のそんな表情を、斜めの角度で下から見上げていた。
しかし、フッと目を伏せると、再び琴とは反対側に顔を背けてしまう。
(やっぱり……正一さんのことを説明しなければ、一度根付いた私への不信感を、拭うことはできないのかしら)
琴は顔を俯かせ、膝の上でギュッと手を握りしめた。
顕清の戦友で、佐和子の兄だと、そのままを伝えて済むのであれば、それが一番簡単なことだ。
しかし……。