今宵、エリート将校とかりそめの契りを
ところがその次の瞬間、声を抑えていた手を掴み上げられてしまった。


涙を隠し切れず、琴の喉がヒクッと鳴ったその時――。
覆い被さるように身を屈めた総士が、彼女の唇を奪った。


(……え?)


しっとりと唇を包む温かい感触に、琴は大きく目を見開いた。
琴に触れた総士の唇が、彼女のそれを食むように動く。
唇をくすぐられる感覚に、琴の胸がドクンと大きな音を立てた。
それは不快な疼きではなく、不思議なほど甘く琴の身体に浸透していく。


「そ、総士さ……」


琴が薄く開いた唇に、総士は容赦なく舌を捻じ込んだ。


「んっ、ふ、うう……」


総士の舌は、まるで生き物のように、琴の口内を蠢く。
未知の感触に怯み慄く琴のそれを、あっさりと根っこから絡め取る。


「ん……そう、しさ……」


正一に触れられそうになった時は、ただ嫌悪感しかなかったのに、琴は甘い声を漏らした。
膝からガクッと力が抜けそうになって、彼の胸に無意識にしがみつく。
総士もそれに気付き、左腕を彼女の背に回し、強く強く抱きしめた。


何度も角度を変えて唇を貪られるうちに、どちらが求めているのかわからなくなる。
琴はうっとりと目を閉じ、総士にされるがまま、熱く甘い接吻に酔いしれ……。
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