今宵、エリート将校とかりそめの契りを
総士はそう言って、今来た道を再び戻り始める。
そして、一番に目に入った真新しいレンガ造りのカフェのドアを開けた。
ドアに付けられた呼び鈴が、チリンチリンと音を立てる。
「総士さん、あのっ……」
我慢できるから早くお屋敷に帰りましょう、と言うつもりで、琴は総士の軍服の裾をツンと摘まんだ。
しかし総士は、「いらっしゃいませ」と出てきた女給に人数を告げ、さっさと奥まったテーブル席に向かってしまう。
「好きなの頼め」と向けられたメニューを見て、不覚にも琴はゴクンと生唾を飲んでしまった。
(ど、どうしよう……全部食べたいっ)
琴がメニューを食い入るように見つめる間も、カフェの店内から、女性の視線が総士にビシバシと向けられている。
自分にもついでに向けられるその目が、『あんな素敵な軍人さんにあんな小娘!?』と言っているようで、琴はきゅうっと肩を竦めた。
しかし、女学生風の袴に白いエプロン姿の女給が近付いてくると、総士はさっさと自分の分の珈琲を注文してしまう。
「決まったか? 琴」
顔を向けて促され、ここでも総士の怪我と自身の空腹の狭間で葛藤しながら……。
「あ、アイスクリームを……」
ボソボソした声で、琴はそう答えた。
そして、一番に目に入った真新しいレンガ造りのカフェのドアを開けた。
ドアに付けられた呼び鈴が、チリンチリンと音を立てる。
「総士さん、あのっ……」
我慢できるから早くお屋敷に帰りましょう、と言うつもりで、琴は総士の軍服の裾をツンと摘まんだ。
しかし総士は、「いらっしゃいませ」と出てきた女給に人数を告げ、さっさと奥まったテーブル席に向かってしまう。
「好きなの頼め」と向けられたメニューを見て、不覚にも琴はゴクンと生唾を飲んでしまった。
(ど、どうしよう……全部食べたいっ)
琴がメニューを食い入るように見つめる間も、カフェの店内から、女性の視線が総士にビシバシと向けられている。
自分にもついでに向けられるその目が、『あんな素敵な軍人さんにあんな小娘!?』と言っているようで、琴はきゅうっと肩を竦めた。
しかし、女学生風の袴に白いエプロン姿の女給が近付いてくると、総士はさっさと自分の分の珈琲を注文してしまう。
「決まったか? 琴」
顔を向けて促され、ここでも総士の怪我と自身の空腹の狭間で葛藤しながら……。
「あ、アイスクリームを……」
ボソボソした声で、琴はそう答えた。