今宵、エリート将校とかりそめの契りを
慌てて手に力を入れようとしたが、努力虚しく、琴の手は宙を掻いた。
「きゃっ……!」
「なっ、おいっ……!」
綺麗な顎を仰け反らせて見上げていた総士が、琴が足を滑らせるのを見て、ギョッとしたように声をあげた。
その声は琴の耳を掠めるだけで、なんの意味ももたない。
掴まる物を失った琴の身体には、容赦ない重力がかかる。
手も足も宙でバタつくだけで、琴は木の下に真っ逆さまに落下した。
地面に叩きつけられる衝撃と、それに伴う痛みを覚悟して、ギュッと目を閉じる。
ところが、琴の身にはなんの痛みも訪れない。
「うっ……」
身体の下から呻き声が聞こえて、琴は薄く目を開けながら首を傾げた。
「総士様!!」
階上の窓で、総士を呼ぶ声が鋭く響いた。
同時に、しっかり開いた琴の視界いっぱいに、顔を歪めた総士が映り込む。
「っ、え」
「お前な……。落ちるなら落ちると、先に宣言しろ」
ギョッと息をのむ琴の耳元すぐのところから、忌々し気な舌打ちが聞こえる。
「なっ……なっ!?」
耳をくすぐる吐息に驚き、琴は大きく目を剥いて飛び起きた。
そうして、琴はようやくこの事態を自分の目で確認した。
「も、申し訳ございませ……!」
木から足を滑らせ地面に落下した琴が、まったくもって無傷なのは、木の下に立っていた総士が受け止めてくれたおかげだ。
「きゃっ……!」
「なっ、おいっ……!」
綺麗な顎を仰け反らせて見上げていた総士が、琴が足を滑らせるのを見て、ギョッとしたように声をあげた。
その声は琴の耳を掠めるだけで、なんの意味ももたない。
掴まる物を失った琴の身体には、容赦ない重力がかかる。
手も足も宙でバタつくだけで、琴は木の下に真っ逆さまに落下した。
地面に叩きつけられる衝撃と、それに伴う痛みを覚悟して、ギュッと目を閉じる。
ところが、琴の身にはなんの痛みも訪れない。
「うっ……」
身体の下から呻き声が聞こえて、琴は薄く目を開けながら首を傾げた。
「総士様!!」
階上の窓で、総士を呼ぶ声が鋭く響いた。
同時に、しっかり開いた琴の視界いっぱいに、顔を歪めた総士が映り込む。
「っ、え」
「お前な……。落ちるなら落ちると、先に宣言しろ」
ギョッと息をのむ琴の耳元すぐのところから、忌々し気な舌打ちが聞こえる。
「なっ……なっ!?」
耳をくすぐる吐息に驚き、琴は大きく目を剥いて飛び起きた。
そうして、琴はようやくこの事態を自分の目で確認した。
「も、申し訳ございませ……!」
木から足を滑らせ地面に落下した琴が、まったくもって無傷なのは、木の下に立っていた総士が受け止めてくれたおかげだ。