今宵、エリート将校とかりそめの契りを
「つ、妻になるとは言いました。でも、あくまでも仮初めの契りでしかないと。あなたもそれでいいと仰ったじゃないですか!」
心の中で『冷静、冷静』と呪文のように言い聞かせながら、琴は自分を奮い立たせる。
琴の剣幕をジッと見つめ、総士は閉めたドアに背を預けた。
胸の前で腕組みをし、わずかにしなだれるような緩い姿勢。
首を傾げて向けてくる斜めの視線が、寛いだ着流しの効果も相まって、妙に妖艶だ。
不覚にもドキドキと胸が騒ぎ出すのを必死に押さえ、琴は総士に畳みかけた。
「だから、こういうことも絶対……」
「わからないのか? これでも俺はお前に協力してやっている」
「っ、え?」
またしても意味不明な言葉で遮られ、琴は勢いを飲み込めないまま、言葉に詰まった。
琴の不信気な瞳に、総士は目を伏せてクッと笑う。
「今のままでは、お前の方が明らかに分が悪い。公正さを欠いたままでは、俺も収まりが悪い。だから、積極的にお前に隙を見せてやろうと思ったんだが?」
「隙って……」
総士の言葉を反芻して困惑する琴を、彼はジッと見据える。
腕組みしたままゆっくり足を踏み出し、琴の目の前でピタリと足を止めた。
心の中で『冷静、冷静』と呪文のように言い聞かせながら、琴は自分を奮い立たせる。
琴の剣幕をジッと見つめ、総士は閉めたドアに背を預けた。
胸の前で腕組みをし、わずかにしなだれるような緩い姿勢。
首を傾げて向けてくる斜めの視線が、寛いだ着流しの効果も相まって、妙に妖艶だ。
不覚にもドキドキと胸が騒ぎ出すのを必死に押さえ、琴は総士に畳みかけた。
「だから、こういうことも絶対……」
「わからないのか? これでも俺はお前に協力してやっている」
「っ、え?」
またしても意味不明な言葉で遮られ、琴は勢いを飲み込めないまま、言葉に詰まった。
琴の不信気な瞳に、総士は目を伏せてクッと笑う。
「今のままでは、お前の方が明らかに分が悪い。公正さを欠いたままでは、俺も収まりが悪い。だから、積極的にお前に隙を見せてやろうと思ったんだが?」
「隙って……」
総士の言葉を反芻して困惑する琴を、彼はジッと見据える。
腕組みしたままゆっくり足を踏み出し、琴の目の前でピタリと足を止めた。