今宵、エリート将校とかりそめの契りを
「生涯……なんて、言っていいの」


まだ瞳に不信感を滲ませながら、琴は掠れた声で言った。
総士はフッと口角を上げる。


「お前は俺を愛するのは面倒だと言った。さっさと隙を突いて殺すんだろう? ならば俺の生涯などそう長くはない。お前が最後の女でも、別に構わん」

「私なんかに簡単に殺されたりしないとも言ったわ!」

「ああ。俺がお前に命を奪われる時が来るなら、それは俺が本気でお前に惚れる時だ。俺はそう思っている」


自信満々に早口で畳みかけられ、琴は一瞬返答に窮した。


(なによ……なんでこの人、こんな強気で言い切れるの)


黙っていたら、言い負かされてしまったのを認めるようだ。
琴は頬を赤く染め、悔し紛れに総士を睨み上げた。


「不可能だと思ってるの。上から見下すような言い方、不愉快だわ」


琴の瞳に力が宿るのを見て、総士はどこか満足げにほくそ笑んだ。


「そう怒るな。だから協力してやると言ってるだろう?」


そう言って目を細め、総士はそっと琴に手を伸ばした。
その手で頬を撫でると、琴はビクッと首を縮めた。
しかしそれ以上の抵抗は見せず、琴はただ総士に強い瞳を向けている。
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