今宵、エリート将校とかりそめの契りを
(私がそばにいて……この人が穏やかに眠る時が来れば……)


そこまで総士が心を許せる存在になれたら、琴は家族の仇を討つことができる。
それはきっと確実だ。
その為に、琴は総士の妻として、義務を果たす必要がある。


琴はゴクリと唾をのんだ。
選ぶべき道が一つしかないのは、自分でも十分すぎるほどわかっている。
だからこそ、琴は意を決して総士を見つめた。


彼女の瞳が強い決意の光を帯びるのを見て、総士は魅惑的に微笑んだ。


「心が決まったか。それなら、今宵は結婚初夜だ。大人しく俺に身を委ねろ」


鷹揚な言い方に反発して言い返そうとしたものの、すぐに総士が覆い被さってくる。
彼の身体の重みを受け、琴の身体は足の爪先が反り返るほど力がこもった。
それが伝わったのか、総士はフッと小さな笑い声を漏らす。


「安心しろ。できる限り優しくしてやる」


今まで聞いた中で一番柔らかい総士の声に、琴の胸はドキンと音を立てて跳ね上がった。
なにも言い返せないまま、胸の鼓動は意志に反して高鳴ってしまう。


徐々に自身の体重を琴の華奢な身体に預けながら、総士は手早く彼女の薄い夜着を剥ぎ取った。
袖を抜いて肌脱ぎした彼の肌が、琴に重なる。
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