今宵、エリート将校とかりそめの契りを
昼間佐和子と話をしたおかげで、自分がここにいる意味をしっかりと胸に刻み、琴は総士のベッドに入った。
琴が決意を強めたことも知らず、総士は『なにもしない』と言って先に目を閉じた。
それは、彼が油断するのを狙う琴にとって、想定外で願ってもいない好機だった。
『今夜、この人を殺さなければ』
彼の傍らに横たわり、小さな寝息が聞こえてくるのを待った。
『今だ!』と思った瞬間、怯む気持ちは全然なかった。
躊躇うことなく総士の腹を跨ぎ、両手に全体重をかけて彼の首を絞め……。
その瞬間、琴は本気だった。
両手の下で総士が一瞬息をのみ、呼吸を止めた感触は確かにあった。
しかし――。
『こ、と……』
琴の行動に気付き、薄く目を開けた総士が、掠れた声で彼女を呼んだ。
自分を見上げる彼の瞳には、戸惑った様子もなければ、怒りも焦りもない。
生かすか殺すか、選択権は確かに琴にあるというのに、総士からは彼女への憐みしか感じられなかった。
琴の胸には、激しい屈辱と悲しみが広がった。
総士には『細っこい腕』と言われたが、それでも寝ている彼に全体重をかけて首を絞めれば、琴にも殺せたはずだ。
だと言うのに、できなかった。
琴が決意を強めたことも知らず、総士は『なにもしない』と言って先に目を閉じた。
それは、彼が油断するのを狙う琴にとって、想定外で願ってもいない好機だった。
『今夜、この人を殺さなければ』
彼の傍らに横たわり、小さな寝息が聞こえてくるのを待った。
『今だ!』と思った瞬間、怯む気持ちは全然なかった。
躊躇うことなく総士の腹を跨ぎ、両手に全体重をかけて彼の首を絞め……。
その瞬間、琴は本気だった。
両手の下で総士が一瞬息をのみ、呼吸を止めた感触は確かにあった。
しかし――。
『こ、と……』
琴の行動に気付き、薄く目を開けた総士が、掠れた声で彼女を呼んだ。
自分を見上げる彼の瞳には、戸惑った様子もなければ、怒りも焦りもない。
生かすか殺すか、選択権は確かに琴にあるというのに、総士からは彼女への憐みしか感じられなかった。
琴の胸には、激しい屈辱と悲しみが広がった。
総士には『細っこい腕』と言われたが、それでも寝ている彼に全体重をかけて首を絞めれば、琴にも殺せたはずだ。
だと言うのに、できなかった。