今宵、エリート将校とかりそめの契りを
「っ……!」
胸にギュッと抱き竦められ、琴の身体はさらに強く強張った。
それに気付いたのか、総士がハッと息をのむ気配が伝わってくる。
「すまない。寝惚けた……」
そう言って、総士は無意識の抱擁をあっさりと解き、ベッドを軋ませて上体を起こした。
それと共に、琴の全身をポカポカと包み込んでいた温もりが、一瞬にして霧散する。
「あ……」
琴は思わず短い声をあげて、起き上がった総士を目で追ってしまった。
ベッドから見上げる視線に気付いた彼が、訝し気に小首を傾げる。
「なんだ? 琴」
「い、いえ」
琴は慌てて顔を背け、そう返事をした。
(私……なにを『寂しい』って思ったの?)
抱きしめられたことに警戒して身を強張らせたというのに、彼の腕から解放されて温もりを追ってしまうなんて。
琴は自分でも不可解な心の動きに動揺して、総士に背を向け布団の中で身体を丸めた。
総士はそれ以上なにも言わず、ギシッとベッドを軋ませた。
琴がそっと肩越しに窺うと、彼はベッドから下り、窓辺に向かって歩いて行った。
それを見て、琴もベッドの上でそっと上体を起こす。
「琴。女中に言いつけておくから、今朝はちゃんと食事をしろ」
総士は琴に背を向けたまま、窓辺のカーテンを両側に開けてそう言った。
胸にギュッと抱き竦められ、琴の身体はさらに強く強張った。
それに気付いたのか、総士がハッと息をのむ気配が伝わってくる。
「すまない。寝惚けた……」
そう言って、総士は無意識の抱擁をあっさりと解き、ベッドを軋ませて上体を起こした。
それと共に、琴の全身をポカポカと包み込んでいた温もりが、一瞬にして霧散する。
「あ……」
琴は思わず短い声をあげて、起き上がった総士を目で追ってしまった。
ベッドから見上げる視線に気付いた彼が、訝し気に小首を傾げる。
「なんだ? 琴」
「い、いえ」
琴は慌てて顔を背け、そう返事をした。
(私……なにを『寂しい』って思ったの?)
抱きしめられたことに警戒して身を強張らせたというのに、彼の腕から解放されて温もりを追ってしまうなんて。
琴は自分でも不可解な心の動きに動揺して、総士に背を向け布団の中で身体を丸めた。
総士はそれ以上なにも言わず、ギシッとベッドを軋ませた。
琴がそっと肩越しに窺うと、彼はベッドから下り、窓辺に向かって歩いて行った。
それを見て、琴もベッドの上でそっと上体を起こす。
「琴。女中に言いつけておくから、今朝はちゃんと食事をしろ」
総士は琴に背を向けたまま、窓辺のカーテンを両側に開けてそう言った。