今宵、エリート将校とかりそめの契りを
「隠蔽って」

「それは、お前にも話しただろ? 顕清の部隊が壊滅されたのは……」

「正一さん。それ……本当なのかな」


琴は躊躇いながらも、彼に皆まで言わせず遮った。
勢いを削がれた形で、正一だけでなく佐和子も訝しげに「え?」と聞き返してくる。


二人から注視された琴は、迷う心を隠し切れず、目を宙に彷徨わせた。
今、琴たち三人は、総士の軍部での失脚を謀り、彼の家先で密談しているのだ。
万が一誰かに聞き咎められたら、三人ともきっとただでは済まない。


危険だ。
わかっているから、これ以上口を開かずに会話を終えるべきだ。


「なにか……総士さんのせいではない気がして」


しかし琴は、断ち切れない迷いをポツリと口にしていた。


「琴?」


そんな彼女に戸惑い、正一が瞳を揺らした。


「だって……もしも総士さんが、地雷原の存在を知らなかったとしたら」

「あの時偵察に行ったのは、俺の部隊だ。もちろん、曹長を通じて報告は確実に行っている」

「そうだとしても……経路変更の指示忘れは、故意とは言えないでしょう?」

「琴、しっかりしろ! 俺を信じないのか!?」


正一が気色ばんで声を張る。
琴もグッと言葉に詰まった。
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