きみに初恋メランコリー
それから、約30分後。

わたしたちは、近くにあったイタリアンのお店の中、白いテーブルと椅子に向かい合って座っていた。



「こんな安くていい感じの店、このへんにできてたんだな」



ボロネーゼをくるくるとフォークに巻きつけながら、刹くんはちらりと店内に目を走らせてそう話す。



「う、うん。3年くらい前かなぁ」

「へー。花音はよく来んの?」

「そうだね、月に1回は来るかも」

「そりゃ頻繁だわ」



くつくつとのどを鳴らして笑う刹くんに、わたしは咀嚼していたカルボナーラをごくりと飲み込んだ。

……なんだか、彼に言いくるめられるまま、ここにいるけど。

何だろう、昔わたしをあんなにからかってきた刹くんとこうして向かい合ってパスタを食べているなんて、変な感じだ。



「あ、花音、デザート頼んでいい?」



綺麗にボロネーゼを平らげた彼は、そう言いながらメニューに手を伸ばした。

うん、とわたしがうなずく前に、メニューを吟味する顔はすでに真剣そのものだ。
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